東京ドームシティお化け屋敷「呪いの硝子窓」の仕掛けを担当させて頂きました。
東京ドームシティのお化け屋敷「怨霊座敷」は、毎年、夏に夏季特別バージョンという事で飾りかえを行っています。今回は、特殊映像演出に志茂浩和教授を迎えて「志茂式ファンタスマゴリー」と言う映像表現とのコラボです。
硝子窓がテーマの今回は、仕掛けを12ヶ所ほど設置しました。曇りガラスをキャストが潜る演出もあり以前使用した事のあるゲル素材も使用してみました。かなり伸縮性があり使い所によっては効果があると思います。
窓に映るは・・・
映像か?・・・
いや、キャストか?・・・
やっぱり映像か?・・・・
それとも人形か?・・・
と混乱する様な映像効果は「志茂式ファンタスマゴリー」ならではだと思います。
キャストと増設部屋が増えて怖さが倍増する、絶叫編は7/20〜9/1の16:30〜21:00の期間限定です。
是非、お越しくださいませ。
2023年11月1日更新
好評のため「呪いの硝子窓」は、常設開催となりました。
※絶叫編は終了しました。
以下、株式会社オフィスバーン様からの引用です。
お客様を窓の中に引きずり込もうとする女から逃れる
お化け屋敷。
この夜雨子の家に、今度は瑠璃と秋人という夫婦が引っ越してきました。二人は一つだけ気になることがありました。家の奥に、鍵の掛かった“曇り窓の付いた部屋”があったからです。〜その部屋は、夜雨子が閉じ込められて亡くなった部屋だったのです。夜雨子は、秋人をたぶらかし、自分と瑠璃を入れ替えてしまったのです。今でも、瑠璃はその部屋から、助けを求めてきています。どうか、窓のついたドアを開けて瑠璃を助け出し、もう一度、夜雨子を部屋に閉じ込めてください。
【絶叫編】
通常の『呪いの硝子窓』よりも恐怖の演出ポイントがさらに倍増し、恐怖度が何倍にもアップする【絶叫編】
夏の暑さを吹き飛ばす恐怖のエンターテインメントを、ぜひお楽しみください。
開催期間:2023年7月20日(土)〜9月1日(日) <絶叫編> 16:30~21:00(22:00)
利用料金:<絶叫編> 1,300円
※ 絶叫編期間中も開園〜16:00は通常編を営業しております。
概要
タイトル | お化け屋敷「怨霊座敷」特別演出 『呪いの硝子窓』 |
URL | お化け屋敷「怨霊座敷」公式ページ |
場 所 | 東京ドームシティ アトラクションズ お化け屋敷『怨霊座敷』 |
期 間 | 2023年7月20日〜 |
時 間 | 10:00〜16:00 絶叫編】17:00~22:00 ※9/1(金)~10/31(火)までは 21:00 までの営業を予定 ※8/11(金)〜15(火)は 9:30〜 ※混雑状況により、受付時間が変更の場合あり |
料 金 | 1,050円 【絶叫編】1,200円 ※ワンデーパスポート・ライド5・アトラクション1回券での入場可 ※【絶叫編】はワンデー/ナイト割引パスポート・ライド5・アトラクション1 回券利用の際は、 別途 700円が必要 |
ストーリー
夜雨子は、夫とその愛人に謀られて、蛾の鱗粉の入った白粉を顔につけるうちに、体調を崩し寝込むようになりました。
夜雨子が伏せっていたのは、廊下の奥にある窓もない暗い部屋でした。部屋の入り口には、曇り硝子のはめられたドアがあり、その硝子越しに入ってくる光
だけが、外の世界から射し込む明かりでした。
夜雨子の体調が悪くなるにつれて、夫の態度も冷たくなっていきます。食事さえも忘れられがちになり、それどころか、ドアの向こうから夫と愛人の笑い声
が聞こえてくるようになるのでした。
惨めな気持ちを抱えながらも、夜雨子はドアを開け、おぼつかない足取りで食事を受け取りに行かなくてはなりません。
そんな夜雨子の姿を目にすると、夫は憐れさを感じる代わりに、疎ましさを覚えるようになり、ある時とうとう、夜雨子の部屋に外から鍵をかけてしまいま
す。
やがて、夜雨子の症状も重くなり、食事も喉を通らなくなります。夫は手間が省けたかのように、ますます夜雨子から遠ざかり、廊下の奥の部屋に足を運ぶ
ことも少なくなりました。
夜雨子は、重い体を起き上がらせて、ドアのところまで行くと、すがるように立ち上がって曇り硝子に顔を近づけます。そして、見えない硝子の向こうを思
うのでした。
「この向こうに、明るい生活がある。本当は、そんな日の射す場所で、あの人と二人で幸せな生活を送るはずだったのに……」
やがて、彼女は立ち上がる力もなくなり、硝子窓を見上げる視力も薄れ、ひっそりと、その部屋の暗い布団の中で息を引き取りました。
夫と愛人は、彼女の死体をその部屋の床下に埋め、家を出て行ってしまいました。
●
その家に引っ越してきたのは、瑠璃(るり)と秋人(あきひと)という新婚の夫婦でした。
二人は、ひと目でこの家を気に入りました。
ただ一つ、気になることは、廊下の奥にある曇り硝子のはまった部屋のことです。そこのドアには鍵がかかっていて、入ることができません。
その部屋には、大家さんの荷物が置かれているから開けられないようになっている、と説明を受けていました。
けれど、家に慣れるにつれて、その部屋のことも、気にもならなくなっていきました。
2ヶ月くらいが過ぎたある晩のことです。
瑠璃は、誰かの声を聞いたような気がして目を覚ましました。
隣を見ると、寝ているはずの秋人の姿がありません。トイレかと思って待ってみますが、戻ってくる気配がありません。
そのとき、またどこかで人の声が聞こえました。
瑠璃は布団から起き上がると、足音を忍ばせて声のする方へと近づいていきました。
その声は、家の奥の方から聞こえてきました。
息を殺して角を曲がり、廊下の奥をそっと覗くと、あの曇り硝子のはまったドアの前に、秋人が立っています。そして、ドアの奥に向かって、小さな声で語
りかけているのです。
最初はよく聞き取れなかったのですが、やがてその内容がわかるようになってきました。
「うん、うん、わかってる……。一人になんかしないから……。もうすぐ出してあげるから……」
まるで、ドアの奥にいる誰かに話しかけているようです。しかもその声は、瑠璃と出会った頃のような優しく包み込むような声です。
瑠璃は見てはいけないものを見てしまったような気がして、そっと布団に戻りました。
翌朝、秋人を問いただしてみると、彼は何も覚えていないと言います。
けれど、それ以来、気をつけていると、秋人は時々布団を抜け出してあのドアの前に行き、部屋の中の誰かに向かって話しかけているようです。
ある日、秋人が仕事に出かけたのを見計らって、瑠璃はドアの前に立ちました。
耳を澄ませますが、部屋の中からは何の気配も感じられません。開けようとしても、やはり鍵がかかったままです。
そのときです。
ドアの奥から、女の苦しげな声が聞こえてきました。それは、あの夜に聞いた女の声と同じです。
瑠璃は、曇り硝子に顔を近づけて、その奥に何か見えないか目を凝らしました。
その瞬間です。
窓の奥に、突然女の顔が現れました。曇り硝子越しに、女の薄ら笑いを浮かべている表情がわかりました。その顔は、硝子に貼りついているかのようです。
「あの人はもう私のものよ」
女はそう言うと、瑠璃を嘲笑う声を上げました。
恐怖に駆られた瑠璃は、近くにあった置物を窓に向かって投げつけました。
「ガシャンッ」という大きな音と共に、硝子が割れました。その途端、女の笑い声も消えていきました。
そのとき、窓の中から何か陰湿な空気と一緒に、一羽の蛾が舞い出てきました。
恐る恐る窓越しに部屋の中を覗き込むと、そこには誰もいません。瑠璃は割れた窓から手を伸ばして部屋の鍵を開けました。
荷物が置いてあると言われた室内は、ガランとして何もありませんでした。
瑠璃は、しゃがみ込んで割れた硝子を拾い集めました。が、ふとその手を止まりました。
拾い集めている最中に、硝子の破片に息が吹きかかったのでしょう。そこに、何かが浮かび上がったからです。
もう一度息を吹きかけてみると、硝子の破片に何かが書かれていることがわかりました。
「だ」という文字が見えました。どうやら、誰かが硝子に息を吐きかけて、指の先で文字を書いたようです。別の破片を拾い上げて息を吹きかけてみると、
そこには「たす」と書かれています。
いくつか集めてつなぎ合わせると、「だして」「たすけて」「おねがい」という文字が、読み取れるようになりました。
「この部屋の中に誰かがいて、その人物が硝子越しに助けを求めていたんだ……」
そう考えると、薄ら寒いものが背中を走るのを感じました。
瑠璃は、ガラス屋に連絡を取って、秋人に知られないように、その日のうちに同じ曇り硝子をはめてもらいました。
その日のことは、瑠璃は話しませんでしたが、それ以来、秋人は憑き物が落ちたようになり、夜中に布団を抜け出すこともなくなりました。
平穏な日々が戻ったと安心していたある日のこと、不思議なことが起こるよう
になりました。シンクの中でコップが何個も割れていたのです。
あまり気にも止めずに過ごしていると、テーブルの上に硝子の破片が落ちています。写真立ての硝子が割れたり、花瓶の硝子が割れたりします。
家の中で、大小さまざまな硝子が、特に触ってもいないのに割れていくのです。
そしてある日のこと、秋人があの部屋の前を通り過ぎようとしたとき、拾い忘れた硝子の破片で足に怪我を負ってしまいます。
秋人がその怪我を軽く見ていたせいで、傷口が悪化し、病院に行く頃には、足の指を切らなくてはならなくなりました。
退院してからも熱は引かず、秋人は寝込んでしまいます。
熱に浮かされた秋人の頭の中に、一人の女の声が聞こえてきます。それは、どこかで聞いたことのある声でした。その声が、秋人に向かってずっと語りかけ
てくるのです。
「あの窓硝子を割ったのは瑠璃だ」
「足の指を失ってしまったのは瑠璃のせいだ」
「あいつのせいだ。あいつのせいだ」
布団の中で熱に浮かされながら部屋の隅を眺めると、そこに一羽の蛾が止まっているのが見えます。
その蛾は、しばらくすると飛び立つのですが、あちこちと飛び回った末に、また同じところに止まります。止まるところは決まって、古びた箪笥の引き出し
です。
それを見るともなく見ているうちに、何か蛾が自分にメッセージを送ってきているように感じられました。
ようやく布団から起き上がれるようになった秋人は、蛾の止まっていた引き出しを開けてみました。
すると、そこに一本の鍵が入っていました。
鍵を持った時、頭の中に女の声が聞こえます。
「あいつを同じ目に遭わせてやれ」
秋人は鍵を持って廊下に出ると、瑠璃のところに向かいました。
驚いている瑠璃に、秋人は言いました。
「お前と俺は夫婦だ、結婚式の時、神父に言われたことを覚えているか? 夫婦は、同じ喜びと同じ苦しみを味あわないといけないと言っていただろう?
俺の苦しみをお前も味あわないといけない。お前に罰を与えないといけない。
俺の足に怪我をさせた罰を、与えなくてはいけないんだ」
そう言うと、瑠璃の手首を強い力で掴み、引きずるように廊下を進んで行きました。
窓のあるドアに手をかけると、それは抵抗もなく開きました。
戸惑う瑠璃に向かって、秋人は言い放ちます。
「罰を与えなくてはいけないんだ」
秋人は力まかせに、瑠璃を突き倒しました。
次の瞬間、瑠璃の背中に激しい痛みが走りました。
彼女が倒れた床には、片付けたはずの硝子の破片が、まるで瑠璃を迎え入れるようにその鋭い切っ先を上向きにして、びっしりと落ちていたのです。
悲鳴をあげる瑠璃を尻目に、秋人はドアに鍵をかけてしまいました。
ドアの中で、瑠璃が苦悶の声を上げます。
しかし、秋人はその声に耳を貸そうとしません。
瑠璃は、部屋の中から何度も何度も秋人に訴えます。
けれど、聞こえてきたのは、秋人が誰かと話して笑っている声ばかりです。その声は、あの時、硝子の奥から聞こえてきたあの女の声と同じでした。
瑠璃は、背中じゅうに硝子の破片が突き刺さったまま、力を振り絞って立ち上がると、曇り硝子に顔をつけて、外の明かりに向かって助けを求めます。しか
し、秋人は女と笑い合うばかりです。
瑠璃の目の前の硝子が、息で曇ります。彼女は、そこに指で文字を書きました。
「だして」「たすけて」「おねがい」……。
やがて、瑠璃は力尽き、その部屋の中で息を引き取ってしまいました。
今でも、その家では、硝子窓に女の顔が浮かぶことがあると言います。
それは、閉じ込められた瑠璃の姿でしょうか。
瑠璃は、硝子の向こうの死の世界から、あなたをおびき寄せようとしています。
どうか、瑠璃と入れ替わってしまわないように、十分にお気をつけください。
それともう一つ。
この家の床には、硝子の破片が落ちているかもしれません。その破片には、怨念が籠もっています。踏みつけると、その怨念が足の裏から体に取り憑いてし
まいます。
だから、靴だけはしっかり履いて進んでください。
特別映像演出
◼︎ お化け屋敷と志茂式ファンタスマゴリーの出会い
メディアアーティストの志茂浩和さん(神戸芸術工科大学教授)からメールをいただいたのは、昨年の初めのことでした。自分の作品をお化け屋敷で使ったら面白いんじゃないか、というその内容を読み、そこに貼られたYouTubeにアクセスして驚きました。志茂式ファンタスマゴリーと名づけられたその映像作品の数々は、まるで本当にそこに人がいるかのようでした。
早速、ご本人とお会いして意気投合し、大学の研究室にお邪魔することになりました。実物を拝見して、私の驚きはさらに増しました。
そこにいないはずなのに存在するように思えて仕方ないのです。
よく考えてみると、それは幽霊と同じです。
これは是非お化け屋敷で使ってみたい、という思いが強まり、今度は私の方から申し出て、お化け屋敷の企画を考え始めました。
そして、志茂式ファンタスマゴリーを呪いのかかった窓に見立てた時、今回のお化け屋敷「呪いの硝子窓」が生まれたのです。
お化け屋敷プロデューサー:五味弘文
志茂浩和教授
1960 年大阪生まれ、東京在住。
東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻中退。
神戸芸術工科大学教授。
1994 年Sony Music Entertainmennt DEP での受賞を契機に3DCG を修得。
同社よりダリの絵画世界をゲーム化した「incarnatia」(1997)を発表する。以降、プライベートアニメーション製作に取り組みSiggraph などで発表する。六本木アートナイト2018 に出品した「挟まる人」は、第22 回文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員推薦作品、第21 回CS デザイン賞準グランプリに選出されている。2019 年に発表した独自技法SSF(shim style Fantasmagoria)を用いた作品は、六本木アートナイト2019 における「囚われる人」などで大きな話題を呼んだ。
2022 年の個展にてSSF を用いて発表した「弁天様」はSNS で1000 万回以上再生され、2023年にみんなの森ぎふメディアコスモスで開催した「弁天舎ブックフェア」のシンボルとして展示したところ、大きな反響を呼んだ。また、同展で発表した画像生成AI を用いた架空の本「フェイクブック」も好評を呼んだ。
SSF
SSF=Shimo Style Fantasmagoria(志茂式ファンタスマゴリー)
Shimo Style Fantasmagoria
映像であるにも関わらず、すりガラス越しに被写体が存在するように錯覚させる技法。
すりガラス状の板越しに撮影した映像をポリカーボネイト中空越しに再生することで、映像での現象が中空板上で屈折する。これにより、見えている像が実在する板の影響を受けていると認知するため、結果的に映像感が消失し、被写体が実在するかのように錯覚する。これまでの展示では、全ての観客が錯覚することを確認している。
また、現実か映像かの判断がつきにくい為に、映像の内容に関わらず「怖い」と評価されることも多い。「弁天様」が話題を呼んだのは、映像内容・大きさと合わせて、現実か非現実かの判断が難しい「得体の知れないもの」と認知された為だと考えている。特別な装置は用いず、一般的に販売されている材料、機材のみで構成されるため、応用範囲が広いという特徴がある。